出合えた喜びから始まる、春の物語
寒空のなか、枝先につぼみをふくらませ、春、いっせいに咲きほころぶサクラ。
長い冬の終わりを告げるように、躍動する強い生命力や凜とした芯の強さに、
私たちは希望を見出すのかもしれません。やさしい桜色、澄んだ白色、
ふわり弾む八重咲きに、キリッと美しいひと重咲き。どんなサクラと春を楽しみましょうか。
すがすがしき白のひと重をたっぷりと
鎖びた色の鉄器は、春の大地そのもの。そこにどっしりと根を下ろし、天に向かって大き<枝を広げて咲き誇る、白きサクラの繊細な美しさを贅沢にいけました。純白の野趣溢れる大島桜に、ほんのり紅さす紅吉野.ニュアンスの違うひと重咲きが織りなす、奥行き感とエレガンスにうっとりです。春風を取り込むように、1本ずつ丁寧に挿していきます。
サクラ*大島桜、紅吉野
少量飾りで際立つ、八重桜の艶やかさ
開花とともに萌黄色の若葉も動き出す、八重桜。なかでも赤みが強く、絹のように薄い花びらを重ねる大輪の松前紅豊は艶やかです。存在感のある花はシンプルに飾るほど、花の清らかさや力強さが溢れ出てきます。ガラスから透けて見えるほっそりとした枝のラインが、軽やかさを呼び込んで。枝先で弾けるように開いた若葉に、春の勢いを感じます。
サクラ*松前紅豊(まつまえぺにゆたか)
花の素顔に触れたくて
ぐっと1輪に近づいてみれば、淡く、濃く、
華やかに、清純に…。花の表情の豊かさに驚きます。
満ちる花々を紡ぎ、春を祝福する
満開のサクラの下で、折れた小枝や花びらを紡いだかのようなナチュラル感溢れるリースです。染井吉野の細くてしなやかな花枝を絡ませて作ったベースは、花々がふわりと揺れ、軽やか。ひと枝ごとの味わいを大切に、短く切った大島桜や彼岸桜の花枝を挿し込めば、表情はより柔らかく豊かに。ほとばしる春の息吹に満ちたリースで、春を祝いましょう。
サクラ*染井吉野、大島桜、彼岸桜
散り際の美しさを、桜スイーツと味わう
散り際も美しく、愛おしいサクラ。空に舞い上がる桜吹雪から発想した、ティータイムのおもてなしはいかが。八重桜のぽってりとした形と色を、桜色のマカロンに重ね、スタイリングしてみました。自宅で気軽に楽しむなら、盛り過ぎたサクラを、水に張った器に浮かべてみて。透けるような花びらの繊細さなど、時を忘れて眺めていたくなります。
サクラ*松前紅豊
春の花と、伸びやかに
サクラが春を告げると、球根花や花木もいっせいに咲き、
花盛りに。そんな自然の情景をヒントに、サクラを愛でましょう。
赤や紫色で洗練された表情に
楚々とした薄紅のサクラに、赤や紫という強い色との出合いは新鮮です! 春の陽光を受て輝く、チューリップやラナンキュラスの濃色は艶やかで、意外にも相性抜群。すっきりとした高さのあるピッチャーに、色を固めるようにいけることで、華やかで洗練された象に。天に向かって、伸びやかに溢れ出す勢いが初々しく、ドラマティックです。●ほかに、ラナンキュラス、チューリップ
サクラ*思川、彼岸桜
1種いけの器を寄せて、棚に春を描く
サクラを主役に、スイセン、ムスカリ・・・と1種類ずつ挿した器を棚に並べ、春の庭をコーディネイトしました。おしゃれに見せるには、器選びが肝心。サイズや形は違うけれどガラス製で揃え、ひとつだけ水色の陶器をアクセントに加えています。蔓性のハゴロモジャスミンを棚上に置き、垂らすことで、流れと統一感をもたらしました。●ほかに、スイセン、ムスカリ、ハゴロモジャスミン、コデマリ
サクラ*松前紅豊、関山
花・増田由希子 撮影・栗林成城