• TOP
  • 連載一覧
  • さまざまな赤が織りなす気品。『ホテル・プラザ・アテネ』|パリ発、季節の花だよりVol.4

さまざまな赤が織りなす気品。『ホテル・プラザ・アテネ』|パリ発、季節の花だよりVol.4

さまざまな赤が織りなす気品。『ホテル・プラザ・アテネ』|パリ発、季節の花だよりVol.4

パリのパラス(フランスのホテル格付けにおける最上級クラス)のなかでも、特にオートクチュールとゆかり深いのが 、モンテーニュ通りの顔、8区にある『ホテル・プラザ・アテネ』です。 ディオール、シャネル、ニナ・リッチ…オートクチュールメゾンが軒を連ねるファッションストリート、モンテーニュ通りの歴史は、『ホテル・プラザ・アテネ』なくしては語れません。ファッションデザイナー、クリスチャン・ディオール氏が、『ホテル・プラザ・アテネ』の顧客へのアピールを目的に、向かいにメゾンを構えたというのですから! 

初夏が来るたびに開催される、特別な日のデコレーション

パリでもっとも華やかな通りとされる、シャンゼリゼ大通りからほど近い『ホテル・プラザ・アテネ』(以下『プラザ・アテネ』)。『プラザ・アテネ』と聞いて、上の写真の風景、ファサードを埋め尽くす深紅のストールとゼラニウムを思い出す方も多いことでしょう。1911年の創業以来、パリのラグジュアリーシーンをを代表するホテルです。その『プラザ・アテネ』が、初夏の到来に合わせて開催する「ディネ・ルージュ」の会場デコレーションを取材しました。

『プラザ・アテネ』の中庭は、毎年初夏になるとテーブルがセットされ、テラスレストラン「クール・ジャルダン」(中庭のガーデン、という意味)に変身します。この「クール・ジャルダン」の再来を祝い、モンテーニュ通りの各メゾンが顧客を招待して開催する晩餐が「ディネ・ルージュ」です。つまり、「ディネ・ルージュ」とは、赤の晩餐を意味します。『プラザ・アテネ』のテーマカラー、赤でデコレーションされた花々が迎える特別なひと時。

こちらは、ディネ・ルージュの招待客用に飾りつけられた入り口です。バラやシャクヤク、カーネーションなど、毎年、主役の花が変わります。上の2枚の写真のように、その年によって、アレンジの趣がガラッと変わるのも特徴です。

花やスタイルには、パリらしさとトレンドを反映します

2018年のディネ・ルージュは、夕方から天気が崩れるとの予報から、ホテル内の「サロン・オートクチュール」に会場が変更になりました。

会場へ続く廊下や、手前の部屋には赤バラがふんだんにあしらわれ、まるで、バラ園さながら。

四方の壁を埋め尽くす鉢植えのバラ、コンソールテーブルの上にもバラ…贅沢なシーンが広がります。コンソールテーブルに添えた小ぶりのシャンデリアが、たっぷりのバラをやさしく照らし、なんともロマンティック!

そして、それらの奥には、2018年のディネ・ルージュの会場が…!

テーブルには、ゲストが間近で見ることができるよう、高さのあるアレンジが飾られています。大小のバラを中心に、シャクヤク、スイートピー、アジサイなど、赤系の花をふんだんに織り交ぜ、シダやユーカリのグリーンで動きを出したアレンジです。

放射状を描くユーカリの枝からは、ワイルドな表情も。

「庭や自然が少ないパリでは、人々は素朴な自然のイメージを求め、それを愛しています。だから、今回のアレンジには、シャンペトルの要素を取り入れました」と語ってくれたのは、シェフ・フローリストのクリステル・ベルテさん。

「『プラザ・アテネ』は、パリのパラスホテルですから、パリらしい花選びとアレンジを心掛けています。エキゾティックな花を使うことはありませんし、奇抜なアレンジをすることもまずありません。パリのシックに出会うことを期待した、ゲストたちに応えるのが私たちの仕事です」

『プラザ・アテネ』専属フローリストとして、勤続15年になるクリステルさん(下写真・中央)。ゲストをもてなす花に対する思いを綴る言葉は、とまることがありません。

「専属フローリストを抱え、ホテル内部に独自のアトリエを持つパラスホテルは、数多いパリのホテルの中のわずか10軒。私たちは毎日、花を完璧に保つためだけに、全神経を注いでいます。これは贅沢な仕事であり、かつ贅沢な環境です。だからといって、私たちは一流の職場で働いている、だから世界一なんでも知っている、などとは思いません。花に関する、さまざまな情報をいつでもキャッチするよう心掛けていますし、広く世界中のトレンドを見てもいます。クラシックが信条の『プラザ・アテネ』においても、常に時代とともに進化はしているのです」

シンプルで印象的に。計算された各所の花あしらい

こちらは、会場壁面のバラのインスタレーション。照明が加わって、完成になります。照明で花に陰影をつけることで、バラの寄せ植えがいま以上に生き生きとしてくるのです 。

会場となった「サロン・オートクチュール」は、2014年のリニューアルオープン時に誕生した、新しいバンケットルームです。100名以上の着席ディナーが可能な面積、バカラのシャンデリアとゴールドの鏡張りの壁面、バルコニーの鉄細工…。パリのリュクス、パリのシックが、ひとつの形になっています。

最後に、ホテルの中の花も見てみましょう。まずは、メインエントランスから。

「エントランスホールの花は、 必ず1種類だけを使い、シンプルなアレンジにしています。柱に設置されている花器に合わせ、必然的にこのルールが生まれました。週にいちど、花を総入れ替えするので、花の種類は変わりますが、スタイルそのものが大きく変わることはありません」と、クリステルさん。この日はカラーを主役に、ツルソバの枝、モンステラなどが使われていました。

スイーツのワゴンサービスが名物の、ティーサロン「ギャラリー」の花は、7本のカーネーションが基本。テーブルが小さいので、ゲストの邪魔にならないように、との配慮からのスタイルです。カーネーション以外の花を使うときも、“7本”でコンパクトにまとめています。

変わって、レストラン「ルレ・プラザ」へ。ここは、アールデコが全盛だったホテル創業当時、1920年代の内装が圧巻です。奥行きのない扁平なデザインの花器を使っているため、花は必ず1種類に抑えているとか。

こちらの写真は、廊下に飾られた花。館内の廊下には、ところどころに花が飾られています。また、室内装飾にも花モチーフのものが多く見られました。

下の写真は、エレベーターを降り、客室へ向かう廊下手前の空間。サロンのようなくつろぎ感があるシーンに飾られた花も、シンプルにまとめられています。

クリステルさんに、フローリストの仕事をお聞きしました。「毎朝6時、ワゴンいっぱいに花を詰めて、ホテル内のすべての場所を1周します。それが私の1日の始まり。カーテンや柱の陰にワゴンを隠して、花のメンテナンスを。なるべく目立たないように働く術は心得たものですよ(笑)」

『プラザ・アテネ』の花は決して奇抜に走ることなく、パリのシックを忠実に守り、常にゲストたちに寄り添う存在。だからこそ、パリの人々がいま好む、シャンペトルスタイルを取り入れていたりもします。

クリステルさんからは、「一方、フランスでも地方の人たちは、カチッと整った正統派スタイルが好きです。とかく人はないものねだりなものですね(笑)。日本の皆さんも、きっと同じでは?」との指摘が。

「日本の私たちは、パリで人気のスタイルが好きです」とお答えしましたが…いかがでしょうか。

Profile角野恵子 Keiko SUMINO-LEBLANC

この連載について

パリ発、季節の花だより

花からパリの今が見えてくる! 注目のトレンド、人気のホテルやお店、公園など、フレッシュな“花のパリ”情報をお届けしています。日本とはひと味もふた味も違う、美のエッセンスをどうぞ。