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現代アートと花の競演。ジャポニスム2018のひとつ「SHIP’S CAT」展から

記事 2018/11/30
現代アートと花の競演。ジャポニスム2018のひとつ「SHIP’S CAT」展から

2018年は、日仏友好160周年のアニバーサリーイヤーです。日本とフランス、両国の外交関係が樹立した、1858年10月9日の日仏修好通商条約調印からちょうど160年の月日が経ちました。これを記念して、2018年7月~2019年2月の8か月間、フランスではパリを中心とする約100の会場で、日本文化関連イベントが行われます。「ジャポニスム2018」と銘打った本イベントの中から、ルーヴル美術館で開催された展覧会をひとつ紹介しましょう。

旅の守り神を模した、日本の現代アートを世界に発信

日仏友好160周年、京都・パリ友情盟約締結60周年を記念し、日本政府が主催する「ジャポニスム2018」参加企画事業のひとつ「SHIP’S CAT」展。

展覧会では、現代美術作家・ヤノベケンジさんと、和紙作家・堀木エリ子さんのコラボ作品が初公開され、ふたりの作品を通じて、日本の現代アートが紹介されました。会場は、ルーヴル美術館のカルーゼル・デュ・ルーヴルです。

現在のルーヴル美術館はルネッサンス期の王宮が前進で、中世の要塞を一旦取り壊した上に建設されています。1983年の大ルーヴル計画工事によって、それまで隠れていた要塞部分が発見された時は大ニュースでした。発見された要塞跡はリニューアル計画に取り入れられ、今ではシュリー翼(3つのブロックのうちのひとつの名称)の一部にその姿を見ることができます。フランスという国の重い歴史をひしひしと体に受けながら、館内を進んで行くと、目の前に開けるモダンな空間、カルーゼル・デュ・ルーヴル。そこに、日本の現代作家によるアートが展示されていました。

会場に入るとすぐに、ヤノベケンジさんの作品「SHIP’S CAT」がお出迎え。現代アートかくあるべし、といった堂々たる存在感のネコの像2体です。この会場の奥の間に、初公開となるヤノベケンジ×堀木エリ子作、和紙製の「SHIP’S CAT」が展示されています。

和紙というデリケートな(破れやすい)素材から、こんなにも迫力のある作品が生まれるなんて! 和紙を透かして届く柔らかい光は、日本の障子や行灯を思わせます。そしてネコのキラリと光る眼! 仁王像の目つきに通ずる凄さを感じました。このネコは柔らかくやさしく発光しながら、内部に強烈な念を秘めているよう…。

会場には、「SHIP'S CAT」の図柄による、巨大障子絵巻「Picture scroll of SHIP'S CAT」も飾られていました。。

「SHIP’S CAT」は、日本にある、コミュニティホステルWeBaseのために制作された作品で、旅人たちの守り神です。由来は、15世紀から17世紀半ばの大航海時代に、船に乗っていたネコたち。この時代、ネコは、食物や貨物をネズミから守る航海のお守り(SHIP’S CAT)として、船に乗っていたそう。展示された「SHIP’S CAT」たちの堂々としたポーズと存在感、キラリと光る眼は、旅人たちの守り神そのものに見えました。

日本とフランス、ふたつの国の美が融合した「花」

「SHIP’S CAT」展オープニングセレモニーでは、現代アート作品のレセプションパーティにふさわしい見事な花装飾がありました。担当したのは、岡本文子さんとナタリー・ジェグーさんのフローリストユニット、アトリエ・カーミンです。

ホオズキやススキ、コケなどを使った和テイストでありながら、パーティの華やかさとフランスらしいリラックス感を演出したデコレーションについて、岡本さんが説明してくれました。

「主催者からのリクエストは、『SHIP’S CAT展』のポスターに使われているオレンジ色を取り入れることと、フラワーアレンジを和風にすることでした。ホオズキ、ススキ、コケ、枝もの、赤い実などを採用しているのは、そのためです。しかし、ただ和風にするだけでは、日仏ユニットのアトリエ・カーミンが制作する意味がありません。華やかなヨーロッパの要素や、私たちふたりが好きな野の草花を、たっぷりと取り入れています」

コケの上にレトロな瓶を置いて草花を挿したり、ホオズキの下にダリアを添えたりといったこまかな工夫が、和テイストが漂いながらも独特なアレンジに仕上げています。

和風のアレンジを、こんなふうにさらりとセンスよく仕上げるコツを、岡本さんに伺いました。

「花材選びがすべてと言っても過言ではないくらい、どんな花材を選ぶかが重要です。たとえば、リクエストされたオレンジ色は、ありふれたアレンジになりがちな難しい色。オレンジ色の花ではなく、オブジェ的なフォルムをもつホオズキで取り入れたことは、アレンジ成功の鍵のひとつです。自然が相手の仕事なので、予定した花材がいつも入手できるとは限りませんが…」

クライアントと綿密な打ち合わせを行い、スタイルや色を決定しても、花選びは自然が相手のため、市場に行った日の、そのときの勝負にならざるをえません。これは、見本市会場のデコレーションでも、結婚式のフラワーアレンジでも、すべての花仕事にいえることです。「市場に行ったときの勝負」を勝ち抜くコツは、ズバリ、「野生のカン」なのだそう。

「一発勝負の現場だからこそ、頭のなかで決め込みすぎずに市場に行って、『これを使いたい!』と思ったひと目惚れを選ぶようにしています。ひと目惚れは必ずありますから、それを信じて仕入れるのです。そうして選んだ花をメインにしてデコレーションを始めると、必ずうまくいくのですよ。だからこそ、『野生のカン』を基本にしています。」

グリーンや枝ものをたっぷりと使い、エアリーにいけながら、アレンジ全体を絶妙なバランスで美しく仕上げているのは、さすが、プロならではの技です。

草花、グリーン、枝ものたちで風が通り抜けるアレンジに

岡本さんの話は続きます。「ナタリーも私も、自然の野の草花が大好きです。その気持ちを大切に、いつも花と向き合っています。そのため、アトリエ・カーミンは、クオリティが高く、値段が手頃なオランダ産の花より、パリ近郊の農家が生産する花材を、意識的に選んでいます。パリ近郊には、魅力的な花を育てる農家がいくつもあるんですよ。地元の生産者を応援して、パリ近郊ならではの個性的な花々を守りたい…そんな思いもあるんです。日本の言葉に言い換えれば、地産地消の動きに似ているかもしれません」

イートローカルならぬ、アレンジローカル(?!)の精神です。おおらかなまでにナチュラルなアトリエ・カーミンのアレンジは、酸素を惜しみなく発散しているようにも感じられます。その酸素の元は、彼女たちがこだわるパリ産の元気いっぱいの草花にあるのかもしれない、と思うのでした。

カルーゼル・デュ・ルーヴルに展示された「SHIP’S CAT」たちは、パリ近郊産の花が発する生き生きとした「気」と、ルーヴル美術館にみなぎるフランスの歴史を、その眼にしっかりと焼きつけたに違いありません。展覧会終了後、「SHIP’S CAT」たちは船に乗って日本に帰国し、鎌倉、博多、そして京都の、コミュニティホステルWeBaseに戻りました。

コミュニティホステルWeBase
http://we-base.jp

アトリエ・カーミン
https://ateliercarminfleurs.com

ジャポニスム2018
https://japonismes.org

Profile角野恵子 Keiko SUMINO-LEBLANC


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